2011年7月13日燧ケ岳

標高2356m

4時過ぎに目が覚めた。
5時から近くを散歩。
霧の中の風景が美しい。

朝靄の向こうで朝焼けに染まる燧ケ岳。











ヤナギトラノオ











ニッコウキスゲ









早朝は熊が出るとのことで、木道に設置されている鐘を鳴らす。
ニッコウキスゲの花は1日しか咲かない。
翌日には別のつぼみが開花する。
昨日の夕食後は雨に打たれて大分痛んだ感じだったが、今日は今朝咲いたばかりの新鮮な花だ。

朝食は6時。
6時35分出発(山ノ鼻の尾瀬ロッジ)。
尾瀬御池13時30分到着。
所要時間6時間55分。
熊沢田代で昼食休憩15分。
歩行時間6時間40分。
見晴8時到着。
山ノ鼻から見晴まで1時間25分。
柴安ー11時到着。
見晴から柴安ーまで3時間。
柴安ーから御池まで2時間30分、昼食休憩を除くと歩行時間2時間15分。
一般の方はこのタイムを参考にしないように。

これまでいろんなところを旅したが、尾瀬は別格だ。
楽園とはこのことだろう。
「夏がくれば思い出す」
きっとそうなると思う。
この季節、ニッコウキスゲが見事だ。
早朝なので、今朝咲いたばかりの新鮮な花を楽しむことができた。
ワタスゲも多い。
昨日は雨にぬれてしょんぼりしていたが、大分乾いてきた。
ミズバショウの季節は過ぎているが、一か所だけ咲いているところがあった。



コバイケイソウ、ヒメシャクナゲ、サワラン、トキソウ、数多くの花が咲き乱れ、夢のような季節だ。

燧ケ岳へと続く木道には朝食後の出発ラッシュで人が多い。





振り返り至仏山を眺める。




サワラン。
とても小さく背も低く、周りの草に埋もれていて見つけにくい。











オゼコウホネ











燧ケ岳は逆光と雲でほとんど見えない。
その燧ケ岳に向かって延々と続く木道。





見渡す限りニッコウキスゲ。











カキツバタ





見晴の小屋はもうすぐだ。





見晴から燧ケ岳へ向かう。
見晴新道分岐までは木道が続いている。


見晴新道は樹林帯の中、歩きにくい岩場の急斜面が延々と続く。
燧ケ岳(ひうちがたけ)は雪渓もあり、初心者お断りの山だ。
標高差も1000mある。

暗い森にギンリョウソウが咲いていた。
ぞくっとする花だ。



オオレイジンソウ、ゴゼンタチバナ、オトギリソウ、ジャコウソウ、カラマツソウ、いい季節だ。













ミクロの世界にも森はある。











オオバミゾホオズキ



そろそろ尾根に出ろよという気分だが、いつまで経っても尾根には出ない。
ようやく山頂近くで展望を得ることができた。
今日は雲が多く、低い雲が来ると視界は数十メートルになる。
幸い雲が切れるタイミングで至仏山と尾瀬の写真を撮ることができたが、霞んでいて絶景、大展望とはいかなかった。
高い山ほどいい写真を撮るのは難しくなる。
標高が雲の高さになり、視界がきかなくなることが多いのだ。

向こうに至仏山、手前には先ほど通った見晴の小屋が見える。





燧ケ岳山頂の柴安ー。





柴安ーへ続く道。





ゴゼンタチバナ?



柴安ーから一度下り、俎ー(まないたぐら)に登り返す。
柴安ーから下り始めたところに小さな雪渓が残っていた。
結構怖い。
注意して下る。

下り終わってから振り返り撮影。











鞍部から俎ーを望む。





俎ーから柴安ーを振り返り眺める。





遥か下方に熊沢田代が見える。


ここから先もなかなかの難所だ。
岩の多い急坂を下るのだが、水が流れて川のようになっており、まるで沢下りだ。
岩でないところは湿地のようになっており、ずぼっと足が入る。
時々深く入るのでなるべく足を置かないようにする。

今この状態だと光合成できるのは2ヶ月ぐらいしかないのでは?



途中に看板があり、「この先の沢は迷いやすいので注意。途中で左に折れる。」とあった。
その先は沢が巨大な雪渓になっていた。
一歩を踏み出すのにしばらく時間がかかった。



下の雪が溶けて踏むとずぼっと抜けるところもある。
踏み跡をたどって注意深く下る。
次第に雲に覆われ、視界は10mほどに。
アイゼンの踏み跡は一つもない。
しかしここはアイゼンが欲しい。
アイゼンさえあればかなり楽だ。
傾斜が緩いので、一度転んだら止まらず滑落して死ぬということはない。
雪の上で転んでも、岩場よりは安全。
しかし転ぶのは嫌だ。
しばらく下ったが、いつまで経っても左への道はない。
道を見落とし、このまま雪渓の沢を下るのか。
大丈夫か?
土の道が見えたので喜んで乗ると、雪渓の上に薄く泥が被さっているところで滑り易さは同じだった。
ようやく雪渓が終わり沢下り。
ところがその先で再び雪渓。
いい加減面倒になってきて、しゃがんで両手を後ろにつき、ずるずると滑り落ちるとこれがなかなか楽しいのだが、手袋がびしょびしょで泥だらけになった。

ようやく左に曲がる個所を見つけた。
よかった、見失ってはいなかった。
300mというと普通の道ならあっという間だが、雪渓だととてつもなく長く感じる。







ヒメシャクナゲ


その先も悪路。
しばらく下ると、ようやく熊沢田代に出た。
湿原が広がり、まるで天国のようなところだ。
装備を固めた中級以上の登山者でないとここにたどり着くことはできない。





タテヤマリンドウ














広々とした湿原でたった一人お弁当を食べる。
聴こえるのは鳥の鳴き声と風の音だけだ。







少し登って振り返り、俎ーと熊沢田代を眺める。





遥か下方に広沢田代。


ここからの下りも相変わらずの悪路。
木道になったと思ったらすぐに元の悪路に戻る。
しばらく下って広沢田代に出た。

ハナニガナ





ワタスゲの道。




トキソウ?





ベニサラサドウダン



さらに悪路を下って御池に到着。

14時40分のバスまでカレーライスを食べ、お土産を見たり尾瀬のビデオを見たりして過ごした。

会津高原尾瀬口駅までは所要時間1時間50分。
遠い。
途中会津駒ヶ岳登山口を通った。
百名山なのでいずれ登りたい山だが、この山も遠いなあ。
15時30分頃から猛烈な雨が降り出した。
毎日夕立だ。
山はできるだけ早く出発し、目的地にできるだけ早く到着するのが基本だ。
雷も怖い。

会津高原尾瀬口駅から鬼怒川温泉駅までは所要時間47分。
どこまでも深い森が続く。
鬼怒川温泉駅では特急まで30分ほどあったので改札から出て近くの店でお弁当を買った。
初めて来たが、驚くほど巨大な温泉街だ。
鬼怒川温泉から春日部まで特急で1時間30分。
新越谷まで東武伊勢崎線に乗り、南越谷から武蔵野線。
武蔵野線に乗ると土地勘がありほっとする。
21時35分ようやく帰宅。
14時40分のバスに乗ってから何と6時間55分!
何て遠いんだ!
しかしこのコースを通らないと熊沢田代を体験することはできなかった。
あれは得難い体験であった。

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